昼間に言われた言葉が、自分の耳に引っかかった。
家に帰ってイヤリングを外すと、言葉が床に落ちた。
頭に引っかかって取れなくなった、怒られた言葉。風呂に入ってもふやけず、飯を食っても抜け落ちない。
布団の中に入ると、言葉が頭の中に入り込んで、ぐるぐると回り出した。うるさすぎて眠れない。
鏡の前で、ガンギマリの目をして、頭から言葉を抜き出そうとした。
短く生えた顎髭みたいになかなか掴めない。やっと掴んで引き抜くと、意識が遠のいたから、やめた。
ヤカンのお茶が溢れ出し、高い笛のような音が響く。コンロまでが永遠のように遠くて、間に合わない。
琥珀色の液体は部屋中をなみなみと満たした。
身体に力が入らない。琥珀色の液体が身体中に張り付く。下からひたひたとやってきた液体が口を覆った。
僕は、何も言えなくなったことにひどく安心した。
全てが水浸しになって仕舞えばいいなぁ。
角だらけの岩は壊れた心のよう
砕けた岩は自分の心のよう
あぁ、雲ひとつない満点の夏空の下、潮風が吹く青い海。
波に晒されて、ゆらゆらと漂い、近いては離れる。砕け散らばった僕の琥珀色の欠片を、
無垢で美しいあなたに集められたら